女将の足跡
令和5年度 春の宿泊安全対策研修会を行いました
テーマ:被災施設に学ぶ 台風15号からの教訓
講 師:油山苑 女将 大塚 郁美さん
参加人数:14名
毎年、全国各地において自然災害が発生しています。来る災害に備えるため、災害対応力の向上を目的に研修会を開催いたしました。
今回は令和4年9月の台風15号により、甚大な被害を被った油山苑 女将 大塚郁美さんに罹災の体験やそこから得られた教訓など伺いました。
まず発災時、日々の訓練が役に立ち宿泊者26名が垂直避難出来、全員無事であったエピソードから、
日頃より避難訓練、避難経路の確認をしておくことがいかに大切であるかを感じます。
今回の研修会では「災害コーディネーター」という災害時、復旧の導線を整えてくれる力強い存在を知りました。
油山苑さんでは災害NGO結(yui)さんにお世話になったとの事。行政からの支援を要請しつつ、並行して
自ら行動し、災害コーディネーター、災害ボランティアに直接助けを求めて行くことも大事であると
学びました。これは被災経験者ならではの情報です。
インターネットで「災害ボランティア」と検索すると、数多くのボランティア団体が存在し、ホームページや活動レポートから、活動内容を知ることも出来ます。平時より興味を持って情報収取ができます。
最後に災害への備えとは、災害のケースによって違うということの認識をしながら、基本は同じである
こと。そして人とのつながり大切にするとの事です。
甚大な被害を受けながらも、あたたかい人たちとのつながりと、行政からの支援、そしてご自身の並々
ならぬ努力によりリニューアルオープンをむかえた油山苑さん。今後の益々のご繁栄を願ってやみません。
ふじのくにの女将 あけぼの会 事務局
令和5年度新年研修会を開催いたしました②
研修会では静岡県ご当地調味料のテイスティングも行いました。
≪テイスティング≫
左から★栄醤油醸造「濃口醤油」「再仕込み醤油」「うす口醤油」★杉井酒造 純米本味醂「飛鳥山」★カネジュウ食品「あいじろみそ」
研修会後の懇親会では、テイスティングした醤油を実際お食事する中で味わっていただきました。また、地元素材と発酵調味料を使用したメニューを楽しみました。
≪伝統発酵調味料 お宿での取入れ例≫
醤油三種味比べ
研修会でもテイスティングした醤油3種を用意し、実際刺身で味比べを行いました。醤油の味の違いが実感でき、また会話も弾みます。
金目鯛の塩麴焼き(写真中央)
地元の食材である金目鯛と沼津産の塩麹が使用されています。若狭地で味を付けた金目鯛を塩麹に漬けこんで焼かれています。塩麹の風味を生かすため、焼いてから更に塩麹が上に塗られています。塩麹を使うことで、素材の旨味を引き出し、身も柔らかくしっとりと仕上がっています。また、塩麹には消化を助けたり健康を増進する効果もあります。
伝統発酵調味料と向き合うことで、その土地の自然、歴史、食を知ることにつながり、その土地を訪ねる目的になり得ると感じます。地域色感じるおいしいく健康にも良いお料理の提供や地元調味料のご紹介など、おもてなしのひとつするための研鑽を今後も積んで参ります。
ふじのくにの女将 あけぼの会 事務局
令和5年度新年研修会を開催いたしました①
令和6年1月25日(木)新井旅館さんにて新年研修会を開催いたしました。
テーマ:発酵料魅了の魅力~静岡県ご当地調味料の活用~
講 師:近藤 ゆりこ 様
参加人数:34名
女性部、静岡県の食をテーマとした活動の一つとして、日本の食文化に欠かせない伝統発酵調味料について知見の深い講師をお招きし、その魅力と活用方法。特に静岡県のご当地調味料の紹介と活用について講演いただきました。コロナ禍経て健康意識が高まり、伝統発酵食品は免疫力を高めるとして今注目されています。
講演でははじめに伝統発酵調味料とは何か、その魅力についてお話しいただきました。
伝統発酵調味料は日本の四季の変化や微生物の力に委ねながら、作り手の五感や経験を活かしつつゆっくりと丁寧に作られており、日本の伝統工芸品と同様の美しさが感じられます。そこでは「麹菌」という微生物も関与し、うま味や甘味が作り出され、味や香りが複雑になり、奥行きのあるある味わいへと導きます。これが日本の伝統発酵調味料の大きな特徴、魅力につながります。
つづいて静岡県内のご当地調味料の紹介と活用についてお話いただきました。
【 醤油 】
(有)栄醤油醸造 掛川市横須賀38
江戸時代、寛政7年創業の醤油醸造元。昔ながらの木桶造りにこだわり、「丸大豆・小麦・塩」の原料を活かした天然醸造による醤油造りを今なお続けられている。
〇栄醤油(濃口醤油)、〇栄甘露醤油(再仕込み醤油)、〇うすくち醤油
全国シェア1%の貴重な再仕込み醤油が静岡県内で醸造されている。その上、木桶仕込みの醤油は国産全体の1%を切っていると言われており、大変希少な醤油が静岡県内で手に入る。
【 味醂 】
杉井酒造 藤枝市小石川町4丁目6番4号
創業は天保9(1838)年。純米本みりん「飛鳥山」は静岡県で生産されている唯一の本みりん。大正年間に焼津港周辺の水産練り物の原料としての需要に応えるため製造を始めたのがきっかけ。原料には粳米で造った麹ともち米、それに米から造った本格焼酎を用いられている。
〇純米本みりん「飛鳥山」
調味料としてのみならず、デザート酒としてそのままでも楽しめる。
【 味噌 】
カネジュウ食品㈱ 焼津市吉永7-1
はじまりは江戸時代中期。創業以来三百年、頑なに守ってきた伝統の味。京都の白みそと田舎味噌の特徴を合わせもつ(相伴う)ことから「相白(あいじろ)みそ」と呼ばれるようになる。
〇あいじろみそ
東海道丸子宿のとろろ汁や葉生姜のつけ味噌など、静岡の豊富な食材と共に使用されている。
研修会では静岡県ご当地調味料のテイスティングも行いました。
令和5年度新年研修会を開催いたしました②へつづく
令和5年度事業 秋のおもてなし研修会を開催③
地域活性化に取り組む三ケ日町を現地視察いたしました。
≪ 浜名湖クルージング ≫
オフィスナッツ運行の浜名湖クルージングを体験。ヤマハマリーナ浜名湖様より乗船しました。
オフィスナッツでは約70分、9,900円(お1人様)からクルーズが体験できます。
今回は30分程の体験でしたが、皆さんの顔から笑顔があふれる体験でした。
下船にはリステル浜名湖さんの桟橋をお借りしました。 リステル浜名湖さんでは最新の湖上アクティビティが楽しめます。
≪ 乎那の邑 美と善 ≫
レストラン、ショップ、宿泊施設を併設した複合施設「乎那の邑 美と善」を視察。
古民家をリノベーションした宿泊施設とショップは12月にオープン予定。「自然と調和した衣食住」をコンセプトにしており、レストランではオーガニックや地元食材を使った「おいしくて健康によい」メニューが提供されるそうです。三ケ日町の老舗菓子店「入河屋」が手掛けています。
その後、浜名湖畔にある「長坂養蜂場」「入河屋」を視察。平日にも関わらず、お客様が途切れることなく訪れていました。
地元三ケ日を盛り上げたいと尽力する若い力を感じる視察でした。
ふじのくにの女将 あけぼの会 事務局
令和5年度事業 秋のおもてなし研修会を開催②
中村様による講演研修会後、株式会社ブルーレイクプロジェクト(以下BLP)の共同代表3名をお招きし、
お話を伺いました。
BLPは地域の困りごとの解決や環境問題に取り組むなど、社会貢献をビジネス化した組織です。プロジェクトの1つとして地元三ケ日、摘果青みかんの生産ロス解決のため「青みかんプロジェクト」に取り組んでおり「三ケ日青みかんスカッシュ」、クラフトビール「BLUE HEAVEN」、青みかんシャンプーが生み出されました。
中村様からMOTTAINAI戦略を受け継ぎ、見事事業化させた好事例に直接触れる貴重な時間でした。
三ケ日現地視察編につづきます
令和5年度事業 秋のおもてなし研修会を開催①
令和5年10月19日<木>に秋のおもてなし研修会を開催いたしました。
講 師:株式会社フードランド 代表取締役社長 中村 健二 氏
テ ー マ:SDGs時代のMOTTAINAI戦略とそのシナリオ実例
参加人数:45名
昨年度より静岡県ではガストロノミーツーリズムの推進がされており、県内各地で関連事業、イベントが開催されています。女性部といたしましても、今年度は食をテーマに活動をしております。
今回の研修会では、アイディアマンである中村様に、地域の特産物、既存のものから新しい価値を生み出すヒントを講演いただきました。
講師の中村様は大学卒業後、家業である食肉の卸業に従事しながら、地元三ケ日町の課題であった
「廃棄みかん」の商品化に取り組みます。
数々の失敗を繰り返しながらも本業で培った技術を活かし、応用することで、みかんの液状化に成功。「三ケ日青みかんスカッシュ」など、数々の商品開発に貢献しています。
MOTTAINAI戦略から生まれた事例の数々をお話しいただきました。
●みかんの皮に含まれるポリフェノールによる緑内障治療の可能性あるとの研究結果がある。
●とうもろこしの芯からキシリトールを製造。砂糖の代替甘味料として提供されている。
●静岡県と同様にみかんの産地である愛媛県では、みかん搾汁残さから、バイオエタノールを製造する
プラントがあり、技術開発が進められている。
経営環境の急激な変化により宿泊業が抱える課題は尽きません。
捨てられていた物から柔軟な思考と行動力によって新たな価値を作り出し、課題解決の糸口とする。
意識を新たにした研修会となりました。
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左:輸入牛の軟化技術を応用し、廃棄される摘果みかんを皮ごと、袋ごと、まるごと液状化した「三ケ日みかんピューレ」。この技術はクラウンメロンやシャインマスカットなど、他の食品にも応用されている。
右:ピューレを使った商品の一例「三ケ日青みかんスカッシュ」。中村氏に刺激を受け、地元三ケ日町の地域振興に取り組む組織として立ち上げられた株式会社ブルーレイクプロジェクトと、地元の人気店長坂養蜂場とのコラボレーションにより誕生した商品。
ふじのくにの女将 あけぼの会 事務局 ②に続きます
令和5年度事業 経営研修会を行いました
令和5年6月7日<水>総会開催後におもてなし事業 経営研修会を開催いたしました。
講 師:株式会社博報堂ケトル クリエイティブディレクター 皆川 壮一郎 氏
テ ー マ:SNS時代における旅館/ホテルの作り方
参加人数:27名
コロナ禍を経験したことで、人々の考え方、価値観が急激に変化しています。本研修会では宿泊業として、変わりゆく世の中に素早く対応するためのヒントを、多角的な視点から語っていただきたく開催致しました。
皆川様はこれまでクリエイティブディレクターとして、幅広い業界でクライアントの課題解決を手掛けていらっしゃいました。近年では、東京下町、西新井の銭湯「堀田湯」のリニューアルに従事。改装後、客数が前年比の6倍になったと言う実績をお持ちです。
また昨年5月に建て替えに伴い一時閉店になった、三省堂書店神保町本店の屋外広告、店内ポスターにも携わっていらっしゃいます。
今回は数ある経験の中から、当組合員のリニューアルプロジェクトを例にお話しいただきました。
最低限のコストで最大の集客を結びつけるためには、というSNS時代のPR視点より、人気のお宿を分析。そこから人気のお宿では①宿の価値が言語化され、②印象的な「一枚絵」がある事を導き出します。
そこでリニューアルにあたり、まずはお宿とのコミュニケーションを重ねる中で、新コンセプトを打ち出します。
そして明確になったゴールに向け、各業界のプロフェショナル達が終結。腕を振るい、リニューアルが完成しました。
お宿の良さを①一言で言えますか ②象徴する「1枚絵」ありますか がSNS時代におけるリブランディングのキーワードです。
しかしながら自身の良さはなかなか見えず、自覚し難く、多くのお宿にとって難しい課題であります。
研修会終了後の質疑応答では、多くの参加者から活発なご質問、課題解決に向けたご相談が寄せられ、
大盛況のうちに終了しました。
ふじのくにしずおか ホテル旅館 女将 あけぼの会 事務局
令和5年 女性部総会を開催いたしました
令和5年6月7日<水> 焼津グランドホテルにて、会員や来賓など30名の皆さまにご出席いただいて通常総会を開催し、全ての決議が可決されました。
本年は役員改選の年に当たり、2期4年部長を務めて頂いた石上部長からの退任お申し出を受け、部長についても改選となりました。
<令和5年度新役員>
部 長(全域) 山下 純乃(㈱呉竹荘)
副部長(熱海・伊東・東伊豆) 藤間 惠見子(秀花園湯の花膳)
副部長(西伊豆・中伊豆) 森 桂子(新井旅館)
副部長(中部) 鈴木 温子(中島屋グランドホテル)
副部長(西部) 岡部 結子(割烹旅館 琴水)
監 事 瀧 悦子(稲取東海ホテル湯苑)
監 事 嶋田 みのり(熱川プリンスホテル)
新体制のもと、女性部あけぼの会を盛り上げて参りたいと存じます。引き続き女性部活動へのご理解とご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
ふじのくにの女将 あけぼの会 事務局
令和4年度事業 宿泊安全対策研修会を行いました ②
講演から引き続き、実習を行います。
②実習:ポリ袋クッキング
ポリ袋で湯銭する調理法の実習を行いました。調理のコツを学び、手元よくある食材を利用したレシピを実践します。
この調理法は発災後、貴重な水や熱源を有効に使える調理法であり、平時の時短調理法でもあります。
災害時は普段食べなれた温かい食べ物があるだけで心が安定し、心身の健康につながります。
☆普段より手元にある材料で実践する ☆ 「高密度ポリエチレン」と表記の 物を使用 ☆加熱で膨張しない様しっかり空気を抜く
☆熱で穴が空かない様、必ずお皿を敷く ☆鍋のふちにポリ袋を掛けない(溶けない様に) ☆使い捨て鍋を備蓄しておくのも一案
熱湯には十分に注意して調理します。
使用後のお湯を再利用して、今回は缶飲料とお宿売店で販売されているお饅頭を温めました(現場にある物を利用する)。
災害時には災害物資として配られるおむすびなどを温めると、温かい食事をとることが出来ます。
【 実習メニュー 】・・・出来上がったものはポリ袋のままいただけば、衛生的で洗い物が出ません
基本のごはん(水を加え、30分以上、浸すのがポイント)
基本のしゃけ
基本のかぼちゃ
乾物のお味噌汁(加熱不要、お湯のみでOK)
ツナトマトスープパスタ
大規模災害では、物流がストップすることが予想され、一週間程度は自活する備えが必要と言われています。
お客さまの安全・安心をあずかるホテル・旅館として、災害時でも出来る限りのおもてなしができるよう
今後も実践的な体験・経験を積み重ね、防災意識、災害時対応力を醸成する活動を続けて参りたいと思います。
ふじのくにの女将 あけぼの会 事務局 ポリ袋クッキング
令和4年度事業 宿泊安全対策研修会を行いました ①
令和5年3月1日(水) 熱川プリンスホテル カルチャーサロンmizi-culにて行いました。
テーマ:災害食講座 ~ポリ袋クッキング活用術~
①講演:最新の災害食事情
②実習:ポリ袋クッキング
講 師:①一社)日本災害食学会 理 事 守 真弓 様
講 師:②ポリCOOK®︎ 代表 森下 園子 様
昨年9月に発生した台風15号では、静岡県内において土砂災害等により甚大な被害が発生したのは記憶に
新しいことと思います。当組合の会員施設でも営業の存続に関わる被害を被りました。
そこで今回の研修会では、もしもの災害に備える危機管理の一環として、災害時の食をテーマとした講演と
災害食の実習を行いました。罹災を想定した体験、経験をして備える事は、災害時とても有用です。
①講演:最新の災害食事情
防災の最新の考え方として「フェーズフリー」、平常時と非常時の境をなくそうと言う考え方があります。
食で言えば平常時でも非常時でも食べられる食品を日頃から使う、食する。「ポリ袋クッキング」はまさに
この考え方にマッチする方法です。
最新の災害食の流れ「フェーズフリー」の3つの工夫
備蓄の工夫:ローリングストック ⇒平時より消費と備蓄を繰り返し、常時一定の食材を確保します。
食事の工夫:味変 ⇒レシピのアレンジを用意しておく。好物でも毎日では苦痛です。
調理の工夫:ポリ袋調理・水漬けパスタなど ⇒災害時、普段の食事に近い温かいものが食べられます。
被災宿泊施設の事例
最後に2016年熊本地震における被災宿泊施設の事例を伺いました。罹災後3カ月後の現地聞き取り調査より
得られた情報は具体的で、お宿の災害対策に大変参考になるお話しをしていただきました。
②実習編につづく
ふじのくにの女将 あけぼの会 事務局