富士山

超遠望の富士山

多少古いニュースですが、日本経済新聞の2015年1月31日付け夕刊に「富士山よく見える 都内から眺望50年で6倍」と言う記事がありました。

記事によれば、大気汚染の改善とヒートアイランド現象による乾燥の結果、2014年に東京から富士山が眺められた日が138日に上ったということです。気象観測所長さんの「今は明治時代並みか、それ以上に富士山が見られる日が多くなっているのではないか」とのコメントがあります。

しかし、一方で「関東の富士見百景」(国土交通省関東地方整備局が1都8県から富士山のよく見える233地点を選んだ)の一つに認定されていた東京都葛飾区の小菅西公園で、百景の銘板が移転されたというニュースを最近の新聞で読みました。高層建築が増え、富士山が見えなくなってしまったためということでした。

これもまた、少々古いのですが、伊藤左千夫の「野菊の墓」に、次の通りあるそうです。

茄子畑というは、椎森の下から一重の藪を通り抜けて、家より西北に当る裏の前栽畑。崖の上になってるので、利根川は勿論中川までもかすかに見え、武蔵一えんが見渡される。秩父から足柄箱根の山山、富士の高峯(たかね)も見える。東京の上野の森だと云うのもそれらしく見える。

明治時代には、茨城県から富士山が見えていたんですね。

それでは、富士山をみることができる「最も遠い地点」はどこなのだろうという、疑問がわくのが人情です。例えば、太平洋を渡って航海している船からならどのくらい遠くから見えるのか?

海の上からは前に障害物がないので水平線ぎりぎりまで富士山が見えるはずです。海上からなら幾何学的に標高3776メートルの富士山の見える限界距離は、236キロメートルとなるそうです。

ただし、実際に富士山が見えるのは、気象条件やさまざまな要因に左右されます。また、一方で標高0メートルでなく、高い山からならさらに遠距離から富士山を見ることができます。

富士山の眺望や遠望については、さまざまな記録があります。眺望については、公式の記録(?)として認められるためには目視だけではだめで、「撮影した写真」が必要となるのだそうです。

さらに、筑波大付属高校社会科教諭の田代博氏が開発した、地図総合ソフト「カシミール3D」を使って作成した可視マップのCGに一致した場合に「認定」されるのだそうです(楽学ブックス【自然2】富士山。山の展望と地図のフォーラム代表 田代博「富士山はどこまで(どこから)見えるか」による)。

それによれば、最遠望地点は、和歌山県那智勝浦町色川富士見峠で、322.9キロメートルだそうです。

第2位、第3位も南西方向の和歌山県の妙法山322.6キロメートル、大雲取山320キロメートルが続きます。第4位は、西南西の三重県の大地山304キロメートル、第5位が北東の福島県日山299キロメートルです。この後、6位から10位には福島県、三重県、奈良県の東西方向の山が並んでいます(平成29年12月現在)。

南北方向からは、北の方向からのものは、新潟県の越後駒ヶ岳からの198キロメートルで、事務局の杉田さんが新潟県への旅の帰途、峠で富士山が見えたと話していましたので意外に思ったことがありましたが、確かに記録で裏付けられています。南東からは東京都の八丈島東山(三原山)の271キロメートルなどが記録されています。

先の遠望地点のサイトをみても、「未確認」の文字が並んでいますので、将来、目視では見えても写真撮影に成功していない地点から見えたということになるのかもしれません。

また、富士山が見える都府県は、2014年に京都での撮影に成功し20都府県に上るそうです。47都道府県の4割以上、さすがに日本一の富士山です。

 

静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合 元専務理事 府川 博明

2020-12-10 | Posted in 富士山Comments Closed