富士山
富士山とマウンテンバイク
徳川最後の将軍、慶喜公は、明治2年から約30年近くを静岡で過ごしましたが、明治10年ころには県内で
はじめて自転車を所有して乗り回していたそうです。今、慶喜公の住まい跡にある浮月楼には、慶喜公が
お使いになった同じオーデナリ型(ダルマ型)自転車が公の乗車姿の絵とともに展示されています。
温暖な 気候にくわえて街中に坂が少ないせいか、他の都市から静岡市への転勤族が口を揃えて、 「街の
中を走る自転車が多い」と言うのを聞いてきました。
静岡市当局も、「自転車が乗りやすい、こぎやすいのは当市の特徴ですが、反面、自転車利用のルール・
マナーやモラルが低いため、自転車ルール・マナーの徹底とモラルの醸成が必要」と平成27 年度から、
「自転車を活かしたまちみがき」というスローガンのもと、重点プロジェクトに取り組んでいます。十分に
自転車が静岡市の文化の一つであることが意識されています。
それで県内いたるところ自転車が多いと思っていましたが、自転車の保有率の都道府県ランクでは、
京都(44.5%)、大阪(43.6%)、埼玉(43.5%)の順で、関西地区や首都圏が並び、静岡県は31.3%全国
第25位でした(2015年1月、「引越し侍」)。
京都は「学生の街」、大阪は、雨天走行用にハンドルへの傘の固定器具が浸透する独自の自転車文化が
ある地域、埼玉県は平地の割合が全国1位、渋滞対策で自動車より自転車を選ぶ人が多いとのことです。
しかし、静岡県にはとても立派な自転車のメッカがあります。昭和40年に現在の伊豆市大野に設置された
日本サイクルスポーツセンターです。サイクルスポーツの普及を図るため、日本自転車振興会、全国自転
車競技会、自転車産業振興協会ほかの6団体から寄付金を受けて、サイクルスポーツ専用ロード、ピスト
競技場、その他諸施設を整備して発足し、その後トラック競技に関する世界標準仕様の屋内型板張り
250mトラックである伊豆ベロドロームなどを加え、諸外国にも類を見ない規模の自転車総合トレーニ
ングセンター になっています。
先ごろ、2020年の東京オリンピックの自転車競技(トラック、マウンテンバイク)の会場 に正式決定を
みたところですし、1月にはアジアのトップアスリートが集まる「アジア自転車競技選手権大会」が開催さ
れました。
このほかにも水上自転車やサイクルUFOなど、楽しい乗り物が集まった自転車の国。4人乗り自転車や
アニマルサイクルなど、家族で乗れるおもしろ自転車もそろっています。家族連れで1日中自転車を満喫
できる施設です。
サイクルスポーツセンター以外の地域でも、一年を通して雪がほとんど降らない温暖な静岡県では平坦な
道を走るだけでない伊豆半島各地域におけるマウンテンバイクの世界があります。
また、新しい自転車をめぐる動きとして、平成27年の6月県議会定例会で静岡県の川勝平太知事は、日伊
交流150周年記念として、イタリア・フリウリ・ベネチア・ジュリア州から交流の申し出を受けて、スポ
ーツ交流を推進する考えを表明しています。
同州のモンテ・ゾンコラン(Monte Zoncolan)は、標高1750m。日本語では、ゾンコラン山、ゾンコラン
峠とも称されるイタリ アを代表する山で、自転車競技が盛んなイタリアの代表的な自転車ロードレース
大会ジロ・デ・イタリアで、過去に4度、同じくジロ・デ・イタリア女子では過去に1度、ゴール地点に
なっているそうです。
知事によると、イタリア側には富士山での自転車レース開催に強い希望があり、県や静岡県自転車競技連
盟などによれば、交流の一環としてサイクリング大会を、2016年10月1日(土)に富士山と伊豆半島で開催
するとしています。
富士山須走口5合目に通じる「ふじあざみライン」(小山町)と、富士山を望める伊豆半島西海岸でのサイ
クリング大会の開催に向けて、現在調整が進められ、「第1回目は参加者を200名(内イタリア参加者25名
程)とし、定員に達し次第募集を終了します」とされていますから、2016年10月以降も継続して開催され
るものと思います。
静岡県内には、静岡清水自転車道、静岡御前崎自転車道、浜松御前崎自転車道、浜名湖周遊自転車道など、
海岸線や浜名湖沿いの素晴らしい自転車道がありますが、富士山一周約120キロや伊豆半島など、富士山と
自転車が、今回のイタリアとの交流を通じて、より多くの人に認識されれば、静岡県は、さらに多彩な形
でのサイクリングが楽しまれる地域になっていきそうです。
静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合 専務理事 府川博明