富士山

富士山から駿河湾海底まで7千メートル

富士山の高さは、みなさんご存知の通り3,776メートルです。その富士山の眼下に広がる伊豆半島最南端の

石廊崎と御前崎を結ぶ線に囲まれた海域が駿河湾です。その最も深い海底部は2,500メートルに達し、

日本一深い湾となっています。

ちなみに、第2位が神奈川県の相模湾1,500メートル、第3位が富山県の富山湾900メートルです

(静岡県公式ホームページ)。この二つの湾と比べても駿河湾の深さは特筆すべきものです。

いうならば、日本一の高い山富士山から世界でももっとも急峻な角度で深くなる駿河湾へ滑り台のように

急激に落ち込んでいるのです。

2000年ミレニアムを機に当時の堺屋太一新千年紀記念行事担当大臣の呼びかけで始まったインターネッ

ト博覧会。最終的なパビリオンは507、トップページへのアクセスは年間で5億3300万回を達成したと

専務②されます。これに参加した静岡県パビリオン

のキャッチフレーズは、この落差約6,300メート

ル、駿河トラフと呼ばれる湾口付近では、

2,800メートルともいわれていますから、もう思

い切って7千メートルのワンダーワールドと呼ん

でしまえということで、「”標高7000m!?の”ワン

ダーワールド」。静岡県の自然の豊かさや環境      写真:東海大学海洋科学博物館

保全の重要さなどを紹介し、さまざまな賞を受賞いたしました。

急深なだけではありません。この駿河湾の中央部には南北に伸びる溝が存在し、湾の東西を二分していて、

太平洋の黒潮が直接流れ込んでいます。そのため、駿河湾に住む魚類はざっと1,000種類とされ、この湾で

発見された新種の生物も250種以上、駿河湾が宝の海と言われる理由もここにあります。

サクラエビ、タカアシガニ、シラスは駿河湾の代名詞ともいえる海産物ですが、イワシ、アジ、

サバをはじめ、メダイ、ムツ、ヒラメ、ソコダラ類、ボタンエビ、アカザエビ、クルマエビ、イセエビ等が

豊かな海の幸を生み出しています。珍しい深海魚が生息していることでも有名です。

2011年12月にオープンした深海にスポットを当てた沼津港深海水族館では、これらの駿河湾の珍しい生きた

深海魚がみられます。

駿河湾図

なお、沼津港にある「港八十三番地」をはじめ、伊豆半島の西海岸各地で駿河湾から水揚げされる

深海魚料理を味わうことができます。

また、伊豆半島は、東伊豆、南伊豆、西伊豆などを合わせると約20か所のダイバーにとって身近な多くの

ダイビングスポットがあります。

この伊豆周辺、駿河湾の海には、沖縄やフィリピンなど南方にすむ魚の卵や稚魚などが、台風や黒潮に乗っ

て日本の沿岸にやって来ます。海水温が下がる冬場を越せずに死んでしまうこれらの南の海の魚を「死滅回

遊魚」というそうですが、近年は海水温の上昇などから確認される種類が増え、越冬する魚も増加する傾

向にあるようです。「伊豆西海岸の有名なダイビングスポット沼津市大瀬崎でも沿岸魚600~700種のうち

同様に3分の1が死滅回遊魚という」(伊豆新聞「死滅回遊魚って何?」2014年06月14日)。短い期間で

はありますが、秋の伊豆、駿河湾ではこうした本来みられないはずの魚たちまで見ることができるのです。

府川専務 ②-3

アカハチハゼ(大瀬崎)

この急峻な駿河湾が形成された原因は、日本列島がプレート収束境界に位置していて、太平洋プレートと

フィリピン海プレートが、ユーラシアプレートの下に沈み込んでいることによります。

本州で唯一、フィリピン海プレートの上にのっている伊豆半島は、かつては南洋にあった火山島などの集

まりで、プレートの北上に伴い火山活動を繰り返しながら本州に突き当たって現在の姿になったものとい

われています。伊豆を乗せたフィリピン海プレートは、今でも年間数センチの速度で北西に移動し続けて

おり、駿河湾は狭くなりつつあります。この伊豆半島の本州への衝突によって出来た火山が箱根や

富士山です。

2012年9月に「日本ジオパーク」に認定された伊豆半島ジオパークのテーマは、伊豆半島のこの特異な

成り立ちと地学的な現状から、伊豆半島を大きな贈りものととらえ、「南から来た火山の贈りもの」とし、

その中に5つのサブテーマ (1)本州に衝突した南洋の火山島、(2) 海底火山群としてのルーツ、

(3) 陸化後に並び立つ大型火山群、(4) 生きている伊豆の大地、(5) 変動する大地とともに生きてきた人々の

知恵と文化、を設定しています。

伊豆半島ジオパークの世界ジオパークへの2015年の申請は見送られました。また、審査担当が国連教育

科学文化機関(ユネスコ)に格上げされ、事務手続きが改められたことなどを理由に、今後の認定スケジュ

ールは2018年春以降にずれ込む見通しとなっていますが、地元の力を結集して再挑戦に向けて頑張ってほ

しいと思います。

 

静岡県ホテル旅館生活衛生同業組合 専務理事 府川博明

2016-07-23 | Posted in 富士山Comments Closed